2017年6月14日水曜日

カエルの人たち!PickUp!

2017年6月3日(土)、4日(日)に第9回浅草かえるアート展「カエルの人たち!」が開催された。
その「カエルの人たち!」から何名かを紹介したいと思う。
 
場の入り口近くでひときわ目を引く「タワシガエル」。
タワシの質感はそのままなのに、確かにカエルがそこにいる。
 
作者の伊吹氏は「カエルの表面というとつるつるっだったりぬるっとした感じを思い浮かべるけれど、それとは一番かけ離れたものをカエルにしたかった。」と語ってくれた。
 
このタワシなのに今にも動き出しそうな不思議なカエルの絵は会場を訪れた人の心に少なからずインパクトを与えたように思う。
 
今年初参加でまだ若い伊吹氏にはかつて浅草かえるアート展に出展経験のある母がいる。小さいお子さんとの親子参加の出展者はいたが、このような親子二代での出展者は伊吹氏が初めてとなる。今後どんな絵を見せてくれるのか大いに期待したい。
 


 
 
一方、今年で5回目の参加となる小田政数氏は、去年は葉っぱでサーフィン、今年はスケボーと二年連続でスポーツをするカエルを描いた。
 
「オリンピックまではいろんなスポーツをするカエルを描きたい。そしてオリンピックの年には全作品を並べたい。」と、静かにぽつぽつと話す小田政数氏は穏やかな話しぶりの下にどうやら絵でオリンピックを目指すという情熱を秘めているらしい。
 
小田政数氏のように口数は決して多くはないが、声をかけると丁寧に話をしてくれる作家は多い。来年はどんなスポーツになるのか、注目したい。


 
 
 
参加作品は何も絵だけではない。
がまぐちケロリエ氏は布からカエルを生み出す魔術師だ。
 
販売イベントに参加する機会も多いがまぐちケロリエ氏がなぜ販売不可の浅草かえるアート展に出展するのか聞いたところ「販売イベントはどうしても売れる作品を念頭に置いてしまう。浅草かえるアート展は販売のことを気にしなくて良いので自分の好きな作品を作れるし、新しい作品に挑戦してみようという気持ちになれる。他の出展者の作品と比べると自分のはアートではないのではないかと思うところもあるけれど、他の方に負けないようパネル全体でひとつの作品として構成してる。」
 
確かにがまぐちケロリエ氏の作品は毎年新しい作品が展示されている。

 
参加作品もさることながら、会場には気になる人物がいる。
 
「ぼくはアーティストではないので」というカエルーランド氏は自身の作品展示はなく、会場を始終動き回り、はっきり言って何をしているかよく分からない人物だ。
 
今はすっかり浅草かえるアート展の定番となった来場者参加型イベントの「かえるのかおをかいてみよう」はカエルーランド氏の発案で第2回浅草かえるアート展から始めたものだ。
 
「カエルの輪郭線の中に点を3つ描いたらカエルの顔になる、これなら小さなお子さんも含め誰でも描ける。」と語るカエルーランド氏も今のカタチになるまで多少の試行錯誤があった。
 
回数を重ねるごとに何も説明しなくても来場者は描き終わると自然とその辺の壁に貼っていくようになった。その様子を見て「これはもうぼくの手を離れたと思いました。「かえるのかおをかいてみよう」はお客様が作り出すインスタレーションなんですよ。とちょっと満足そうな顔を見せるカエルーランド氏。

同様にちょこまか動き回り黒板の内容を書き換えたり看板を取り付けたりと始終落ち着きのない小さなおじさんもいる。主宰の田村風來門氏だ。

浅草かえるアート展の第1回は一人きりで開催したというとんでもない人だ。
 
田村風來門氏の不思議な魅力に引き寄せられ、どんどん人が集まり今年の第9回では出展者数46組ともなった。出展者数は年毎に右上がりというわけでもないが、ここ数年はだいたい同じくらいの人数が出展している。
 
誰か若手に任せてもいいような雑事を自らこなそうとする田村風來門氏はいつも「主役は皆さんですから。皆さんと一緒に作っていきたい。」と話す。
 
今は自身の作品のパネル展示は行わず、自作のスーパーカエルマンの紙芝居を自ら上演している。紙芝居のおじさんが主宰だと聞いて驚いたという方も少なくないのではないだろうか。

 
浅草かえるアート展は作品との出会いだけではなく、その作品の向こう側、それは作者だったり、会場準備などに携わった人だったりに直接出会える場なのだ。
 
ぜひ会場で直接話しかけてみることをおススメしたい。
 
(日田閏)
撮影N's made